一年経ったので、少し昨年デビューの新種牡馬について考えてみたいと思う。今回はデアリングタクトのインパクトが大きいエピファネイアから。
ちょこちょこ勝ち上がって成功しているイメージの大きいエピファネイアだが、意外にも2勝している馬はデアリングタクトを含めて5頭。デビューが130頭を超えているが、勝ち上がりは今のところ50頭に足りないぐらい。勝ち上がり率は3割を超えて、それほど大成功という感じではないが悪くない数字である。
それを除いても何せデアリングタクトのインパクトが大きい。今後エピファネイアというだけで人気になるのも出てくると考えられるので冷静に見極めて馬券に役立てたい。
エピファネイアの血統背景

父:シンボリクリスエス
エピファネイアの父系、ロベルトからシンボリクリスエスへつながるライン。 これはもうパワー特化と判断した方がよく、実際シンボリクリスエス自体も東京よりも中山の方がパフォーマンスを出せた馬である。
また3歳戦より4歳戦。春よりも秋。と晩成傾向も見せている。産駒も芝向きよりダート向きだったり、坂のあるコースで強い短距離馬、などの方が多い。ルヴァンスレーヴ、サンカルロやストロングリターンのイメージだ。
母:シーザリオ
そのシンボリクリスエスの最高傑作かつ異端児がエピファネイアである。エピファネイア自体もダービーではキズナに斬れ負けし、大雨の菊花賞を楽勝するなど、シンボリクリスエスっぽさも見せていた。
が、結果的にここまで成績を出せた唯一のシンボリクリスエス産駒であるので、その性能はシンボリクリスエスというよりシーザリオで考えたほうが話がすっきりする。
そしてシーザリオ産駒の活躍からわかる通り、シンボリクリスエスとシーザリオのマリアージュ、というより、シーザリオの血の支配度が高いと考える方が納得できる。
母父:スペシャルウィーク
シーザリオの偉大さは父スペシャルウィークの影響である。スペシャルウィークはシーザリオの他にブエナビスタを輩出するなど、牝馬に高い能力を伝えるフィリーサイアーだった。
スペシャルウィークは牡馬はパッとしなかったが、牝馬ではこの大物二頭を含め活躍馬を多数排出し、その牝馬は母として優秀な子を多く輩出している。
余談だが、不思議なもので、母父スペシャルウィークの活躍馬は、ほとんどが牡馬となっている。牝馬ではディアドラくらいのもので、フィリーサイアーの血はなぜか、孫の代では牡馬に影響している。事実シーザリオの牝駒は牡駒ほどの活躍はできなかったし、ブエナビスタの牝駒も母の成績から考えれば納得のいく活躍はできていない。(ブエナは今年念願の牡駒がデビューしたので、今後どうなるか非常に楽しみではある)
血統背景に対して
素直にこの父系から考えると、ダートどんとこい、古馬になってからさらに活躍、「力こそ正義」な産駒が出てくるように考えられる。
エピファネイア産駒には実際現時点でもその傾向はあって、機動力やスタミナで良い所まで行くが、最後の最後ディープインパクト産駒やキズナ産駒に差されて2着の取りこぼしが多い。(1着:52回 2着;63回)
そして斬れがないので、1勝してから上級で立ち回れる馬が少ない。
これについては、2歳3歳戦ではスローからの斬れ味勝負が多くなり、総合力で勝っていたとしても取りこぼしてしまうという、正しいロベルト系種牡馬のイメージである。
エピファネイアをそのままロベルト系として扱うと、やはりシンボリクリスエスと同じような成績しか出せない。具体的に言うと切れ味よりもパワー、芝よりダートという印象。
となると、大きな矛盾が一点発生する。デアリングタクトである。
デアリングタクトにみる成功パターン
ご存知、みんな大好きデアリングタクト。キレッキレだわ、そうかと思えば重の桜花賞も力強く差し切るわ。もういいことづくめな現時点での最高傑作である。
元々スペシャルウィーク産駒は重が上手い馬が多かったので、これを含めてもシンボリクリスエスよりもまんまシーザリオであると考えた方が良さそうな成績である。(現実にオークスで詰まりながらも一気に勝ち切る様はまさにシーザリオだったが)
と考えるのであれば、エピファネイアの一つの成功パターンとして、シーザリオを増強する配合が良さそう。
デアリングタクトで考えれば、父母シーザリオと母:デアリングバードの間で
- ・サンデーのクロス
- ・Sadler’s Wells × Nureyev(叔父・甥の関係)
- ・マルゼンスキー×TryMyBest

がそれぞれクロスか近しい血のニアリークロスになっている。ここの刺激でシーザリオが発現した形だと考えるとすんなり受け入れられる。
これは結局、エピファネイア×キンカメ×サンデーで実現できるので、この王道配合でシーザリオを再現できるかどうかってところに落ち着くと思う。
シーザリオをいじって、ここが発現していれば、シーザリオっぽく。そうでなければシンボリクリスエスっぽく扱うのが良いか。
他の馬から見る傾向と対策
現時点で勝ち上がっている馬の大半が母方にサンデーを持っていて(つまりサンデークロス)、さらにその大半がミスプロを持っている。これはシンボリクリスエスの晩成性、パワー型、というのにサンデーやミスプロの早熟性、柔らかさ、スピードを補強してカバーいるのだと考えられる。
このサンデーミスプロを持たざる者がどのあたりで発火するかはわからないが、大まかなイメージとして、以下のようにまとめることができると思う。
- (少なくとも)ダービーまではサンデーやミスプロ持ちだけ押さえておけば良い
- スローの切れ味勝負になりそうなら、多分斬れる系にやられる
- だいたい牡馬は晩成だったり長距離砲と予想
- サンデークロスとミスプロ持ちはもう少し器用なのが出てくる
- 牝馬は最高到達点としてシーザリオまでありえる
また、数年前に猛威を振るったダートの超一流構成に、ミスプロ・Nureyev・ロベルトの黄金配合があった。エピファにキンカメを付けると、この黄金配合が成り立つ。現時点では芝で速さが足りない系の馬がダートで惨敗しており、ダートの打率は高くないが、ゆくゆくは牡馬でダートの一流馬も排出すると思っている。そちらも非常に楽しみである。
終わりに
基本的にはシンボリクリスエスというのが血としては非常に半端感が出てしまう。何もいじらなければ、牡馬の主戦場はダートか長距離、阪神芝1400、というイメージで良いかと思う。牝馬はこの場合、どこも戦えない可能性もある。よくて中山牝馬Sのイメージ。
が、一変、シーザリオをいじることにより、大化けの可能性もあるので、今後はそこに注目をして、どっちのエピファか、を見極めていきたい。
昔、サンデーとトニービンの成長曲線と得意馬場の違いから、サンデーとトニービンの相対性理論という理論が(ごく一部で)提唱されていた。私は今後これがキズナとエピファの相対性理論になるんじゃないかと少しわくわくしている。あのダービーの1・2着が、得意分野をわけて種牡馬として戦っていく様にはロマンが詰まっている。

では今回はこのあたりで。
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